新旧対照表:訴状(弁論分離+追完)
1              訴    状1              訴    状
2                             令和3年2月25日2                             令和3年2月25日
3東京地方裁判所  御中3東京地方裁判所  御中
4                                        原告   ████████████████████4                                        原告   ████████████████████
5   〒16█-███5   〒16█-███
6    (送達場所)東京都中野区████████████████████6    (送達場所)東京都中野区████████████████████
7          原    告    ████████████████████7          原    告    ████████████████████
8                      電話 ████████████████████8                      電話 ████████████████████
9                      FAX  ████████████████████9                      FAX  ████████████████████
10   〒164-850110   〒164-8501
11          東京都中野区中野4丁目8番1号11          東京都中野区中野4丁目8番1号
12          被    告    中 野 区 教 育 委 員 会
13   〒164-8501
14          東京都中野区中野4丁目8番1号
15          被    告    中   野      長12          被    告    中     野     
13          同代表者中野区長  酒   井   直   人
1614
17却下裁決取消等請求事件15却下裁決取消等請求事件
18訴訟物の価額  金160万円16訴訟物の価額  金160万円
19貼用印紙額  金1万3000円17貼用印紙額  金1万3000円
20予納郵便切手 金0円18予納郵便切手 金0円
2119
22第1 請求の趣旨20第1 請求の趣旨
231 被告中野区教育委員会が令和3年1月27日付でした下記裁決を取り消す
24
25 原告が令和2年3月12日付で被告中野区長にした審査請求を却下する旨の裁決(2中教教第1429号)
262 被告中野区長がした原処分を取り消す
27 被告は原告に対し,各自金160万円を支払え21 被告は原告に対し,各自金160万円を支払え
28 訴訟費用は被告の負担とする22 訴訟費用は被告の負担とする
29との判決を求める。23との判決を求める。
30第2 請求の原因24第2 請求の原因
311 当事者251 当事者
32(1) 原告は上記裁決(以下本件裁決)の審査請求人である。 26(1) 原告は,令和2年3月12日付で中野区長に審査請求をし,令和3年1月27日付で中野区教育委員会に裁決(2中教教第1429号)(以下本件裁決)をされた審査請求人である。
33(2) 被告中野区教育委員会は本件裁決をした行政庁である。
34(3) 被告中野区長本件裁決の審査請求(以下本件審査請求)をされた行政庁である。27(2) 被告は,中野区教育委員会(本件裁決をした行政庁)及び中野区長(原処分をした,及び本件裁決の審査請求(以下本件審査請求)をされた行政庁)が所属する公共団体である。
352 経緯282 経緯
36(1) 発端29(1) 発端
37 原告は,旧中野刑務所正門(東京都中野区新井3丁目 旧法務省矯正研修所東京支所敷地内)の保存・公開方法を審議する中野区文化財保護審議会が開催されることを知った。当該会の傍聴を希望して,令和2年1月31日,中野区区民部文化・国際交流課(同4月に名称変更し区民文化国際課)文化財係に電話で問い合わせた。30 原告は,旧中野刑務所正門(東京都中野区新井3丁目 旧法務省矯正研修所東京支所敷地内)の保存・公開方法を審議する中野区文化財保護審議会が開催されることを知った。当該会の傍聴を希望して,令和2年1月31日,中野区区民部文化・国際交流課(同4月に名称変更し区民文化国際課)文化財係に電話で問い合わせた。
38 ところが,職員からは令和2年3月10日に開催予定であるが傍聴は不可である旨が告げられた。31 ところが,職員からは令和2年3月10日に開催予定であるが傍聴は不可である旨が告げられた。
39(2) 中野区長に本件審査請求をしたこと32(2) 中野区長に本件審査請求をしたこと
40 原告は,主管(文化財係)は傍聴の可否が判断できないだけではないかと考えた。なぜなら,教育委員会は公開が義務付けられていること(地教行法14条第7号)を知っており,その下部機関もそうではないかと考えたからである。実際,最近設置された「中野区いじめ等対応支援特別委員会」はそのウェブページにおいて,会議は公開と謳い,傍聴者を募っている(甲1)。33 原告は,主管(文化財係)は傍聴の可否が判断できないだけではないかと考えた。なぜなら,教育委員会は公開が義務付けられていること(地教行法14条第7号)を知っており,その下部機関もそうではないかと考えたからである。実際,最近設置された「中野区いじめ等対応支援特別委員会」はそのウェブページにおいて,会議は公開と謳い,傍聴者を募っている(甲1)。
41 そこで,傍聴を不可とする法的根拠について情報公開請求した際の不存在通知書を見せてもらい(甲2),さらに,主管の系列の上位に属する可能性が考えられる中野区教育委員会事務局にもメールで問い合わせた(甲3)。34 そこで,傍聴を不可とする法的根拠について情報公開請求した際の不存在通知書を見せてもらい(甲2),さらに,主管の系列の上位に属する可能性が考えられる中野区教育委員会事務局にもメールで問い合わせた(甲3)。
42 最終的に原告は,中野区長の名で「中野区文化財保護審議会は非公開であり傍聴できない」という処分その他公権力の行使を受けた。令和2年3月12日,公開を求めて中野区長に審査請求書(甲4)で本件審査請求をした。35 最終的に原告は,中野区長の名で「中野区文化財保護審議会は非公開であり傍聴できない」という処分その他公権力の行使を受けた。令和2年3月12日,公開を求めて中野区長に審査請求書(甲4)で本件審査請求をした。
43(3) 審理員の指名36(3) 審理員の指名
44 その後,審査庁及び処分庁を中野区長とする本件審査請求の手続きが補正を要求されることもなく進み,令和2年3月31日付の「審理員の指名について」(甲5)が届いた。37 その後,審査庁及び処分庁を中野区長とする本件審査請求の手続きが補正を要求されることもなく進み,令和2年3月31日付の「審理員の指名について」(甲5)が届いた。
45(4) 審査請求書(正本)の送付38(4) 審査請求書(正本)の送付
46 ところが,本件審査請求をして約4月が過ぎた令和2年7月10日に「審理員の指名の取消し及び審査請求書の送付について」,「弁明書の送付及び反論書の提出について」及び「弁明書」が,中野区総務部総務課を差出人とする1つの封筒に入って郵送で届いた(甲6)。39 ところが,本件審査請求をして約4月が過ぎた令和2年7月10日に「審理員の指名の取消し及び審査請求書の送付について」,「弁明書の送付及び反論書の提出について」及び「弁明書」が,中野区総務部総務課を差出人とする1つの封筒に入って郵送で届いた(甲6)。
47 甲6の文書のうち「審理員の指名の取消し及び審査請求書の送付について」(甲6の1)の内容に含まれる,「審査請求書の送付」(行政機関相互の内部行為)は,4で述べるように,行審法の手続きを逸脱している。40 甲6の文書のうち「審理員の指名の取消し及び審査請求書の送付について」(甲6の1)の内容に含まれる,「審査請求書の送付」(行政機関相互の内部行為)は,4で述べるように,行審法の手続きを逸脱している。
48(5) 無効な裁決41(5) 無効な裁決
49 原告は,「審査請求書の送付」に根拠法条の記載が見当たらないため無効と考え,後続する「弁明書の送付及び反論書の提出について」(甲6の2)に応じなかった。42 原告は,「審査請求書の送付」に根拠法条の記載が見当たらないため無効と考え,後続する「弁明書の送付及び反論書の提出について」(甲6の2)に応じなかった。
50 而して,中野区教育委員会が令和3年1月27日付で本件裁決をし,同29日に原告に裁決書(甲7)が送達された。43 而して,中野区教育委員会が令和3年1月27日付で本件裁決をし,同29日に原告に裁決書(甲7)が送達された。
51(6) 訴えの提起の予告44(6) 訴えの提起の予告
52 本件裁決を受け,原告は,本案の提起を民事訴訟法132条の2第1項の規定により被告らに予告し,併せて照会をした(甲8,甲9)。45 本件裁決を受け,原告は,本案の提起を民事訴訟法132条の2第1項の規定により中野区教育委員会及び中野区長のそれぞれに予告し,併せて照会をした(甲8,甲9)。
53 照会に対し,中野区長は回答した(甲10)。一方,中野区教育委員会は延長する旨を通知した(甲11)。46 照会に対し,中野区長は回答した(甲10)。一方,中野区教育委員会は延長する旨を通知した(甲11)。
543 被告らが行政行為について権限がないこと473 中野区教育委員会及び中野区長のそれぞれが行政行為について権限がないこと
55(1) 本件裁決をした中野区教育委員会に権限がないこと48(1) 本件裁決をした中野区教育委員会に権限がないこと
56 中野区教育委員会がした本件裁決の裁決書(甲7)は1枚目で「貴殿(原告)が令和2年3月12日付けで中野区長に対して提起した審査請求」とし,原告が中野区長に審査請求をしたことを認めている。行審法及び他の法令に中野区長にされた審査請求を中野区教育委員会が裁決をすることを可能ならしめる規定は存在しない。49 中野区教育委員会がした本件裁決の裁決書(甲7)は1枚目で「貴殿(原告)が令和2年3月12日付けで中野区長に対して提起した審査請求」とし,原告が中野区長に審査請求をしたことを認めている。行審法及び他の法令に中野区長にされた審査請求を中野区教育委員会が裁決をすることを可能ならしめる規定は存在しない。
57 つまり,裁決書の形式上から中野区教育委員会に権限がないことが明らかであるので,本件裁決は取り消されるべきである。なお,4では手続きの瑕疵の観点からも本件裁決が取り消されるべきであることを述べる。50 つまり,裁決書の形式上から中野区教育委員会に権限がないことが明らかであるので,本件裁決は取り消されるべきである。なお,4では手続きの瑕疵の観点からも本件裁決が取り消されるべきであることを述べる。
58(2) 原処分をした中野区長に権限がないこと51(2) 原処分をした中野区長に権限がないこと
59 第4 2で詳述するように,中野区では,文化財の保護に関することを管理し,及び執行する権限は中野区教育委員会に属する。52 第4 2で詳述するように,中野区では,文化財の保護に関することを管理し,及び執行する権限は中野区教育委員会に属する。
60 そして,権限が中野区教育委員会に属することを,中野区長は,本案の提起前照会へ中野区長がした回答に含まれる「審理員の指名の取消し及び審査請求書の送付について」に係る回議用紙(「別紙1」。甲10の2)3頁目2行目で「当該メールの送付は中野区教育委員会の権限に属する事務としてなされた」と認めた。53 そして,権限が中野区教育委員会に属することを,中野区長は,本案の提起前照会へ中野区長がした回答に含まれる「審理員の指名の取消し及び審査請求書の送付について」に係る回議用紙(「別紙1」。甲10の2)3頁目2行目で「当該メールの送付は中野区教育委員会の権限に属する事務としてなされた」と認めた。
61 最三判昭和29年9月28日(民集第8巻9号1779頁)は,行政行為は表示によって成立するものであり,また表示行為が当該行政機関の内部的意思決定と相違していても,表示行為が正当な権限を有する者によりなされたものである限り,表示されたとおりの行政行為があったものとした。54 最三判昭和29年9月28日(民集第8巻9号1779頁)は,行政行為は表示によって成立するものであり,また表示行為が当該行政機関の内部的意思決定と相違していても,表示行為が正当な権限を有する者によりなされたものである限り,表示されたとおりの行政行為があったものとした。
62 原処分のメール(審査請求書(甲4)添付書類(2),(3))の発信元には「中野区区民部文化・国際課文化財係長佐藤加奈」と表示がある。仮に佐藤加奈が正当な権限を有する者であり,及び中野区長の内部的意思決定が上述のように「当該メールの送付は中野区教育委員会の権限に属する」であったとしても,上の判示により,表示されたとおり中野区長によりなされた行政行為があったと言わなければならない。55 原処分のメール(審査請求書(甲4)添付書類(2),(3))の発信元には「中野区区民部文化・国際課文化財係長佐藤加奈」と表示がある。仮に佐藤加奈が正当な権限を有する者であり,及び中野区長の内部的意思決定が上述のように「当該メールの送付は中野区教育委員会の権限に属する」であったとしても,上の判示により,表示されたとおり中野区長によりなされた行政行為があったと言わなければならない。
63 すると,中野区長は原処分について権限がないことを認めているので,原処分は取り消されるべきである。56 すると,中野区長は原処分について権限がないことを認めているので,原処分は取り消されるべきである。
644 「審査請求書の送付」が手続きの重大かつ明白な瑕疵であること574 「審査請求書の送付」が手続きの重大かつ明白な瑕疵であること
65(1) 法律に根拠を持たないこと58(1) 法律に根拠を持たないこと
66 本件審査請求に係る審査請求書(甲4)は,処分庁(中野区長)に上級行政庁が無い場合(行審法第4条1号)及び処分庁(中野区長)の教示が無い場合にあたる。行審法において審査請求書(正本)の送付に関係する規定は,21条(処分庁等を経由する審査請求),22条(誤った教示をした場合の救済)のみであり,本件審査請求に係る審査請求書は,いずれにもあてはまらない。59 本件審査請求に係る審査請求書(甲4)は,処分庁(中野区長)に上級行政庁が無い場合(行審法第4条1号)及び処分庁(中野区長)の教示が無い場合にあたる。行審法において審査請求書(正本)の送付に関係する規定は,21条(処分庁等を経由する審査請求),22条(誤った教示をした場合の救済)のみであり,本件審査請求に係る審査請求書は,いずれにもあてはまらない。
67 したがって,中野区長が中野区教育委員会に本件審査請求の審査請求書(正本)を送付した行為は,法律に根拠を持たない。60 したがって,中野区長が中野区教育委員会に本件審査請求の審査請求書(正本)を送付した行為は,法律に根拠を持たない。
68(2) 同様の効果を生ぜしめる形式が定められていること61(2) 同様の効果を生ぜしめる形式が定められていること
69 本件審査請求の場合ではないが,審査請求人が処分庁を誤認する等して,誤った審査請求先に審査請求書を提出する場合があり得る。この場合の行政庁の適切な事務取扱については,総務省行政管理局『行政不服審査法 審査請求事務取扱マニュアル(審査庁・審理員編)』(甲12)18頁8~12行目に,「処分庁等,審査庁となるべき行政庁又は教示がされた行政庁のいずれでもない行政庁に審査請求書が提出された場合には,当該行政庁の担当職員は,審査請求人に対し,正しい審査請求先に審査請求書を提出すべきであり,当該行政庁に対する審査請求は不適法な審査請求として却下されることになる旨を説明する。」と記載がある。62 本件審査請求の場合ではないが,審査請求人が処分庁を誤認する等して,誤った審査請求先に審査請求書を提出する場合があり得る。この場合の行政庁の適切な事務取扱については,総務省行政管理局『行政不服審査法 審査請求事務取扱マニュアル(審査庁・審理員編)』(甲12)18頁8~12行目に,「処分庁等,審査庁となるべき行政庁又は教示がされた行政庁のいずれでもない行政庁に審査請求書が提出された場合には,当該行政庁の担当職員は,審査請求人に対し,正しい審査請求先に審査請求書を提出すべきであり,当該行政庁に対する審査請求は不適法な審査請求として却下されることになる旨を説明する。」と記載がある。
70 このように,中野区長が中野区教育委員会に本件審査請求の審査請求書(正本)を送付した行為に関しては,同様の効果を生ぜしめる形式として,行審法が「行政庁(中野区長)は審査請求人に対し「正しい審査請求先†に審査請求書を提出すべきであり,当該行政庁に対する審査請求は不適法な審査請求として却下されることになる」と説明した上で,必要なら当該審査請求を却下し,その後,審査請求人が正しい審査請求先に自ら審査請求書を提出できるようにする」と具体的に定めている。63 このように,中野区長が中野区教育委員会に本件審査請求の審査請求書(正本)を送付した行為に関しては,同様の効果を生ぜしめる形式として,行審法が「行政庁(中野区長)は審査請求人に対し「正しい審査請求先†に審査請求書を提出すべきであり,当該行政庁に対する審査請求は不適法な審査請求として却下されることになる」と説明した上で,必要なら当該審査請求を却下し,その後,審査請求人が正しい審査請求先に自ら審査請求書を提出できるようにする」と具体的に定めている。
7164
72註† ここで本件の場合の正しい審査請求先が中野区教育委員会にはなり得ないことについて説明しておく。65註† ここで本件の場合の正しい審査請求先が中野区教育委員会にはなり得ないことについて説明しておく。
73 特別区は市町村が処理するとされるものを処理する(地自法281条の2第2項)。文部科学大臣は都道府県又は市町村に対し,都道府県委員会は市町村に対し,都道府県又は市町村の教育に関する事務の適正な処理を図るため,必要な指導,助言又は援助を行うことができて(地教行法48条第1項),教育に関する事務には文化財の保護に関することが含まれる(地教行法21条第14号)。つまり,文部科学大臣及び都道府県委員会は,市町村の文化財の保護に関することの適正な処理を図るため,必要な指導,助言又は援助を行うことができる。したがって,文化財保護審議会の適正な処理を図るため,必要な指導,助言又は援助を行うこと,すなわち文化財保護審議会の庶務は地方自治法2条第9項第1号に規定する第1号法定受託事務である(地教行法63条,地自法別表第1)。66 特別区は市町村が処理するとされるものを処理する(地自法281条の2第2項)。文部科学大臣は都道府県又は市町村に対し,都道府県委員会は市町村に対し,都道府県又は市町村の教育に関する事務の適正な処理を図るため,必要な指導,助言又は援助を行うことができて(地教行法48条第1項),教育に関する事務には文化財の保護に関することが含まれる(地教行法21条第14号)。つまり,文部科学大臣及び都道府県委員会は,市町村の文化財の保護に関することの適正な処理を図るため,必要な指導,助言又は援助を行うことができる。したがって,文化財保護審議会の適正な処理を図るため,必要な指導,助言又は援助を行うこと,すなわち文化財保護審議会の庶務は地方自治法2条第9項第1号に規定する第1号法定受託事務である(地教行法63条,地自法別表第1)。
74 一方,文化財の保護に関することの管理及び執行の権限は中野区教育委員会(地教行法21条第14号)または中野区長(地教行法23条第1項第4号)に属する。つまり,仮に,本案の提起前照会への回答の「別紙1」(甲10の2)3頁目2行目で中野区長が主張するように,処分庁が中野区教育委員会である場合としても,審査請求は東京都教育委員会に対してする(地自法255条の2第1項第3号)ので,この場合でも中野区教育委員会が正しい審査請求先になり得ない。67 一方,文化財の保護に関することの管理及び執行の権限は中野区教育委員会(地教行法21条第14号)または中野区長(地教行法23条第1項第4号)に属する。つまり,仮に,本案の提起前照会への回答の「別紙1」(甲10の2)3頁目2行目で中野区長が主張するように,処分庁が中野区教育委員会である場合としても,審査請求は東京都教育委員会に対してする(地自法255条の2第1項第3号)ので,この場合でも中野区教育委員会が正しい審査請求先になり得ない。
7568
76(3) 権限がないこと69(3) 権限がないこと
77 (2)で引用した記載をした理由を,総務省行政管理局行政手続室に問い合わせたところ,「『行政不服審査法審査請求事務取扱マニュアル〔審査庁・審理員編〕』中にある「処分庁等,審査庁となるべき行政庁又は教示がされた行政庁のいずれでもない行政庁」には,行政不服審査法(平成26年法律第68号)上,審査請求書の正本を処分庁等又は審査庁となるべき行政庁に送付する権限がないため,現行の記述になったものであると考えます。」という回答を得た(甲13)。70 (2)で引用した記載をした理由を,総務省行政管理局行政手続室に問い合わせたところ,「『行政不服審査法審査請求事務取扱マニュアル〔審査庁・審理員編〕』中にある「処分庁等,審査庁となるべき行政庁又は教示がされた行政庁のいずれでもない行政庁」には,行政不服審査法(平成26年法律第68号)上,審査請求書の正本を処分庁等又は審査庁となるべき行政庁に送付する権限がないため,現行の記述になったものであると考えます。」という回答を得た(甲13)。
78 このように,中野区長には中野区教育委員会に本件審査請求の審査請求書(正本)を送付する権限がない。71 このように,中野区長には中野区教育委員会に本件審査請求の審査請求書(正本)を送付する権限がない。
79(4) 判例72(4) 判例
80 最一判昭和59年11月29日(民集第38巻11号1195頁)は,盛岡市に所在する旧陸軍観武ケ原練兵場跡の開拓事業で,岩手県が農林部長名で入植名義の変更を許可していた事件に関し「一般に,一定の法律効果の発生を目的とする行政庁の行為につき,法律がその要件,手続及び形式を具体的に定めている場合には,同様の効果を生ぜしめるために法律の定める手続,形式以外のそれによることは原則として認めない趣旨であると解するのが相当である。そうすると,農地法は,前記名義変更の許可のような形式,手続によつて前記のような売渡予約上の権利を有する地位を承継させることを認めておらず,右にみたような要件を具備し所定の手続を履践した者に対してのみ,前記のような予約上の権利を付与することとしたものというべきである。」とした。つまり,同様の効果を生ぜしめるために法律の定める手続,形式以外によることは認められない。73 最一判昭和59年11月29日(民集第38巻11号1195頁)は,盛岡市に所在する旧陸軍観武ケ原練兵場跡の開拓事業で,岩手県が農林部長名で入植名義の変更を許可していた事件に関し「一般に,一定の法律効果の発生を目的とする行政庁の行為につき,法律がその要件,手続及び形式を具体的に定めている場合には,同様の効果を生ぜしめるために法律の定める手続,形式以外のそれによることは原則として認めない趣旨であると解するのが相当である。そうすると,農地法は,前記名義変更の許可のような形式,手続によつて前記のような売渡予約上の権利を有する地位を承継させることを認めておらず,右にみたような要件を具備し所定の手続を履践した者に対してのみ,前記のような予約上の権利を付与することとしたものというべきである。」とした。つまり,同様の効果を生ぜしめるために法律の定める手続,形式以外によることは認められない。
81 このように,同様の効果を生ぜしめる形式が定められている((2))にもかかわらず,その行為をする権限がない((3))中野区長が,法律に根拠を持たない((1)),審査請求書(正本)の送付という専ら実際上の便宜のために打ち出された事実上の措置に過ぎない行為をしたのであるから,後続する(上記註†で示したように,正しい審査請求先にはなり得ない)中野区教育委員会がした本件裁決に法律上の効果を認めることはできず,よって,本件裁決は取り消されるべきである。74 このように,同様の効果を生ぜしめる形式が定められている((2))にもかかわらず,その行為をする権限がない((3))中野区長が,法律に根拠を持たない((1)),審査請求書(正本)の送付という専ら実際上の便宜のために打ち出された事実上の措置に過ぎない行為をしたのであるから,後続する(上記註†で示したように,正しい審査請求先にはなり得ない)中野区教育委員会がした本件裁決に法律上の効果を認めることはできず,よって,本件裁決は取り消されるべきである。
8275
83第3 損害76第3 損害
84 令和2年3月12日に審査請求がされてから同7月10日に審査請求書(正本)を送付したあと反論書の提出期限(同8月7日)までの期間が,被告らが審査請求の手続きを全くせず徒過した期間であると短く見積もっても約5月となる。77 令和2年3月12日に審査請求がされてから同7月10日に審査請求書(正本)を送付したあと反論書の提出期限(同8月7日)までの期間が,中野区が審査請求の手続きを全くせず徒過した期間であると短く見積もっても約5月となる。
85 その間,中野区文化財保護審議会のうち原告が傍聴を希望していた,旧中野刑務所正門の保存・公開の方法を審議する会合(甲14)が同6月30日の第1回,同7月28日の第2回ともに開催済となってしまい機会を逸した。しかも,中野区長は,本案の提起前照会へ中野区長がした回答に含まれる「審理員の指名の取消し及び審査請求書の送付について」に係る回議用紙(「別紙1」。甲10の2)によると,第1回の当該会よりも約1月前の同5月26日にはすでに事案「審査請求書の送付等について」について,吉田雅弘係長,尾関信行課長,海老沢憲部長,横山克人副区長,白土純副区長の系列への回付が済み,酒井直人区長により文書を決定していた。被告らは,原告(審査請求人)にすでに決定した審査請求書の送付について知らせることすらせず黙って放置し,ここで上記約5月のうち約3月を徒過したことになる。78 その間,中野区文化財保護審議会のうち原告が傍聴を希望していた,旧中野刑務所正門の保存・公開の方法を審議する会合(甲14)が同6月30日の第1回,同7月28日の第2回ともに開催済となってしまい機会を逸した。しかも,中野区長は,本案の提起前照会へ中野区長がした回答に含まれる「審理員の指名の取消し及び審査請求書の送付について」に係る回議用紙(「別紙1」。甲10の2)によると,第1回の当該会よりも約1月前の同5月26日にはすでに事案「審査請求書の送付等について」について,吉田雅弘係長,尾関信行課長,海老沢憲部長,横山克人副区長,白土純副区長の系列への回付が済み,酒井直人区長により文書を決定していた。中野区は,原告(審査請求人)にすでに決定した審査請求書の送付について知らせることすらせず黙って放置し,ここで上記約5月のうち約3月を徒過したことになる。
86 当該2回の分の議事要旨は,事後に情報公開請求に見せてもらったが,開示された内容(甲15)のあまりの少なさに原告は衝撃を受けるほどであった。おまけに,当該2回に審議された答申を中野区教育委員会が受ける際,開示された議事要旨に無い内容「曳家の方が現地保存より容易」を,中野区長部局の職員が追加して教育委員に答弁している(甲16。35頁)。この答弁内容の真正性を確かめる術が失われたことは,国家的財産である文化財の保存・活用を意思決定する際の透明性の確保という点で大いに疑義がある(この点に関しては第4でも述べる。)。79 当該2回の分の議事要旨は,事後に情報公開請求に見せてもらったが,開示された内容(甲15)のあまりの少なさに原告は衝撃を受けるほどであった。おまけに,当該2回に審議された答申を中野区教育委員会が受ける際,開示された議事要旨に無い内容「曳家の方が現地保存より容易」を,中野区長部局の職員が追加して教育委員に答弁している(甲16。35頁)。この答弁内容の真正性を確かめる術が失われたことは,国家的財産である文化財の保存・活用を意思決定する際の透明性の確保という点で大いに疑義がある(この点に関しては第4でも述べる。)。
87 審査請求の手続きの違法性と,文化財の保護に関する事務の違法性と,国民の知る権利(憲法21条)の侵害を受けた原告の精神的苦痛は極めて大きい。これらを金銭に評価すると金160万円を下ることはない。80 審査請求の手続きの違法性と,文化財の保護に関する事務の違法性と,国民の知る権利(憲法21条)の侵害を受けた原告の精神的苦痛は極めて大きい。これらを金銭に評価すると金160万円を下ることはない。
8881
8982
90第4 本件の異常性83第4 本件の異常性
9184
92目次85目次
931 はじめに861 はじめに
94 本章では,本件の周辺事情を裁判所の参考に供する。87 本章では,本件の周辺事情を裁判所の参考に供する。
95 本件に関連する中野区例規の改正の歴史を述べ,地自法で定められた「補助執行」に関して,被告らが適正な運営を図っていないことを述べる。特に,文化財の保護に関する事務に関しては,「審査請求書の送付」という行政機関相互の内部行為のため,原告の知る権利(憲法21条)が侵害された。88 本件に関連する中野区例規の改正の歴史を述べ,地自法で定められた「補助執行」に関して,中野区教育委員会及び中野区長のそれぞれが適正な運営を図っていないことを述べる。特に,文化財の保護に関する事務に関しては,「審査請求書の送付」という行政機関相互の内部行為のため,原告の知る権利(憲法21条)が侵害された。
962 文化財の保護に関し管理及び執行する権限は中野区教育委員会に属する892 文化財の保護に関し管理及び執行する権限は中野区教育委員会に属する
97(1) 職務権限の原則90(1) 職務権限の原則
98 文化財の保護に関することを管理し,及び執行するのは教育委員会である(地教行法21条第14号)。91 文化財の保護に関することを管理し,及び執行するのは教育委員会である(地教行法21条第14号)。
99(2) 職務権限の特例92(2) 職務権限の特例
100 (1)の特例が,地教行法23条第1項に規定されている。柱書から本件に関係する部分を抜き出すと「21条の規定にかかわらず,地方公共団体は,条例の定めるところにより,当該地方公共団体の長が,次の各号に掲げる教育に関する事務のいずれか又は全てを管理し,及び執行することとすることができる。」となる。各号列記については法改正があったので,施行日順に掲げる。93 (1)の特例が,地教行法23条第1項に規定されている。柱書から本件に関係する部分を抜き出すと「21条の規定にかかわらず,地方公共団体は,条例の定めるところにより,当該地方公共団体の長が,次の各号に掲げる教育に関する事務のいずれか又は全てを管理し,及び執行することとすることができる。」となる。各号列記については法改正があったので,施行日順に掲げる。
10194
102ア 平成31年4月1日前95ア 平成31年4月1日前
103一 スポーツに関すること(学校における体育に関することを除く。)。96一 スポーツに関すること(学校における体育に関することを除く。)。
104二 文化に関すること(文化財の保護に関することを除く。)。97二 文化に関すること(文化財の保護に関することを除く。)。
105イ 平成31年4月1日施行98イ 平成31年4月1日施行
106一 スポーツに関すること(学校における体育に関することを除く。)。99一 スポーツに関すること(学校における体育に関することを除く。)。
107二 文化に関すること(次号に掲げるものを除く。)。100二 文化に関すること(次号に掲げるものを除く。)。
108三 文化財の保護に関すること。101三 文化財の保護に関すること。
109ウ 令和2年4月1日施行(現行)102ウ 令和2年4月1日施行(現行)
110一 図書館,博物館,公民館その他の社会教育に関する教育機関のうち当該条例で定めるもの(以下「特定社会教育機関」という。)の設置,管理及び廃止に関すること(第21条第7号から第9号まで及び第12号に掲げる事務のうち,特定社会教育機関のみに係るものを含む。)。103一 図書館,博物館,公民館その他の社会教育に関する教育機関のうち当該条例で定めるもの(以下「特定社会教育機関」という。)の設置,管理及び廃止に関すること(第21条第7号から第9号まで及び第12号に掲げる事務のうち,特定社会教育機関のみに係るものを含む。)。
111二 スポーツに関すること(学校における体育に関することを除く。)。104二 スポーツに関すること(学校における体育に関することを除く。)。
112三 文化に関すること(次号に掲げるものを除く。)。105三 文化に関すること(次号に掲げるものを除く。)。
113四 文化財の保護に関すること。106四 文化財の保護に関すること。
114107
115(3) 文化財保護法の改正108(3) 文化財保護法の改正
116 文化財保護法も地教行法と同時に改正されている。関連部分の新旧条文を以下に掲げる。ただし,イでは既存項を繰下げの上,第2項が追加された。109 文化財保護法も地教行法と同時に改正されている。関連部分の新旧条文を以下に掲げる。ただし,イでは既存項を繰下げの上,第2項が追加された。
117110
118ア 平成31年4月1日前111ア 平成31年4月1日前
119190条 都道府県及び市町村の教育委員会に,条例の定めるところにより,地方文化財保護審議会を置くことができる。112190条 都道府県及び市町村の教育委員会に,条例の定めるところにより,地方文化財保護審議会を置くことができる。
120イ 平成31年4月1日施行(現行)113イ 平成31年4月1日施行(現行)
121190条 都道府県及び市町村(いずれも特定地方公共団体であるものを除く。)の教育委員会に,条例の定めるところにより,文化財に関して優れた識見を有する者により構成される地方文化財保護審議会を置くことができる。114190条 都道府県及び市町村(いずれも特定地方公共団体であるものを除く。)の教育委員会に,条例の定めるところにより,文化財に関して優れた識見を有する者により構成される地方文化財保護審議会を置くことができる。
1222 特定地方公共団体に,条例の定めるところにより,地方文化財保護審議会を置くものとする。1152 特定地方公共団体に,条例の定めるところにより,地方文化財保護審議会を置くものとする。
123116
124 ここで,特定地方公共団体は,条例の定めるところにより、当該地方公共団体の長が、文化財の保護に関する事務を管理し、及び執行すること(地教行法23条第1項)とされた地方公共団体である(文化財保護法53条の8第1項)。117 ここで,特定地方公共団体は,条例の定めるところにより、当該地方公共団体の長が、文化財の保護に関する事務を管理し、及び執行すること(地教行法23条第1項)とされた地方公共団体である(文化財保護法53条の8第1項)。
125 この改正で新たに,市町村の教育委員会は,文化財保存活用地域計画を定めることができるとされた(文化財保護法183条の3)。118 この改正で新たに,市町村の教育委員会は,文化財保存活用地域計画を定めることができるとされた(文化財保護法183条の3)。
126(4) 中野区における職務権限の特例(甲17)119(4) 中野区における職務権限の特例(甲17)
127 中野区教育に関する事務の職務権限の特例に関する条例(平成23年4月1日施行(ただし,平成27年4月1日前は法条が「第24条の2第1項」))が次のように定めている。120 中野区教育に関する事務の職務権限の特例に関する条例(平成23年4月1日施行(ただし,平成27年4月1日前は法条が「第24条の2第1項」))が次のように定めている。
128121
129 地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和31年法律第162号)第23条の規定に基づき、次に掲げる教育に関する事務は、区長が管理し、及び執行することとする。122 地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和31年法律第162号)第23条の規定に基づき、次に掲げる教育に関する事務は、区長が管理し、及び執行することとする。
130(1) スポーツに関すること(学校における体育に関することを除く。)。123(1) スポーツに関すること(学校における体育に関することを除く。)。
131(2) 文化に関すること(文化財の保護に関することを除く。)。124(2) 文化に関すること(文化財の保護に関することを除く。)。
132125
133 したがって,中野区において,文化財の保護に関することを管理し,及び執行するのは中野区教育委員会である。126 したがって,中野区において,文化財の保護に関することを管理し,及び執行するのは中野区教育委員会である。
1343 本件に関連する中野区例規の改正の歴史1273 本件に関連する中野区例規の改正の歴史
135(1) 平成31年4月1日の法改正には未対応128(1) 平成31年4月1日の法改正には未対応
136 2(4)で述べたように,中野区は,平成31年4月1日付け地教行法23条第1項の各号列記の改正に未対応であり,文化財保護法の定める特定地方公共団体ではない。同様に,中野区文化財保護条例(昭和56年3月30日施行)(甲6の3「弁明書」別添①)も制定時のままである。それゆえ,同条例17条には「文化財の保存及び活用にあたり,適正な運営を図るため,教育委員会に中野区文化財保護審議会を置く。」とある。129 2(4)で述べたように,中野区は,平成31年4月1日付け地教行法23条第1項の各号列記の改正に未対応であり,文化財保護法の定める特定地方公共団体ではない。同様に,中野区文化財保護条例(昭和56年3月30日施行)(甲6の3「弁明書」別添①)も制定時のままである。それゆえ,同条例17条には「文化財の保存及び活用にあたり,適正な運営を図るため,教育委員会に中野区文化財保護審議会を置く。」とある。
137 つまり,中野区においては,本件に関連する例規が,2で述べた平成31年4月1日施行の法改正に合わせるべくは改正されていない。130 つまり,中野区においては,本件に関連する例規が,2で述べた平成31年4月1日施行の法改正に合わせるべくは改正されていない。
138(2) 平成23年4月1日付の違法な所管分掌131(2) 平成23年4月1日付の違法な所管分掌
139 実は,中野区においては,本件に関連する多くの例規が事務の所管分掌の変更のために平成23年4月1日付で制定・改廃されている。132 実は,中野区においては,本件に関連する多くの例規が事務の所管分掌の変更のために平成23年4月1日付で制定・改廃されている。
140 次表は,平成23年4月1日付の所管分掌の変更をおおまかにまとめたものである。この表は,その根拠を,次節において新旧条文を対照して示すことで証明する。133 次表は,平成23年4月1日付の所管分掌の変更をおおまかにまとめたものである。この表は,その根拠を,次節において新旧条文を対照して示すことで証明する。
141134
142次表凡例:135次表凡例:
143(*) 当初は社会教育に関する事務の一部であったが,現在は「社会教育に関する事務(図書館に関する事務を除く。)」である((3)で後述)。136(*) 当初は社会教育に関する事務の一部であったが,現在は「社会教育に関する事務(図書館に関する事務を除く。)」である((3)で後述)。
144太枠  補助執行を標榜する事実上の所管又は違法な所管(4で後述)。137太枠  補助執行を標榜する事実上の所管又は違法な所管(4で後述)。
145(3) 平成23年4月1日施行で改廃された例規138(3) 平成23年4月1日施行で改廃された例規
146【改正されたもの】139【改正されたもの】
147・中野区教育委員会の権限に属する事務の補助執行に関する規則(甲18)140・中野区教育委員会の権限に属する事務の補助執行に関する規則(甲18)
148 1条(補助執行事務)各号列記に既存項を繰下げの上,次を追加した(ただし,(4)は現行の条文(*))。141 1条(補助執行事務)各号列記に既存項を繰下げの上,次を追加した(ただし,(4)は現行の条文(*))。
149142
150(3) 文化財の保護に関する事務143(3) 文化財の保護に関する事務
151(4) 社会教育に関する事務(図書館に関する事務を除く。)144(4) 社会教育に関する事務(図書館に関する事務を除く。)
152145
153 平成21年4月1日施行時には無かった,3条(公印のなつ印等に係る手続き)を遅くとも平成23年4月1日施行の同規則に追加した。条文を次に掲げ,4(1)でその意味を論ずる。146 平成21年4月1日施行時には無かった,3条(公印のなつ印等に係る手続き)を遅くとも平成23年4月1日施行の同規則に追加した。条文を次に掲げ,4(1)でその意味を論ずる。
154147
1553条(現行): 第1条の補助執行事務において,中野区教育委員会公印規則(昭和54年中野区教育委員会規則第9号。以下「公印規則」という。)第2条に定める公印のなつ印,事前押印,印影印刷をするときは,公印規則に定める手続きによるものとする。1483条(現行): 第1条の補助執行事務において,中野区教育委員会公印規則(昭和54年中野区教育委員会規則第9号。以下「公印規則」という。)第2条に定める公印のなつ印,事前押印,印影印刷をするときは,公印規則に定める手続きによるものとする。
156149
157・中野区立歴史民俗資料館条例(甲19)150・中野区立歴史民俗資料館条例(甲19)
158 「中野区教育委員会」を「区長」と置き換えた。151 「中野区教育委員会」を「区長」と置き換えた。
159・中野区文化財保護条例施行規則(甲20)152・中野区文化財保護条例施行規則(甲20)
160 23条に次の変更をした(ただし,「審議会」は中野区文化財保護審議会)。本規則施行はやや遅れた同7月15日である。153 23条に次の変更をした(ただし,「審議会」は中野区文化財保護審議会)。本規則施行はやや遅れた同7月15日である。
161154
162変更前: 審議会の庶務は,中野区立歴史民俗資料館で処理する。155変更前: 審議会の庶務は,中野区立歴史民俗資料館で処理する。
163変更後: 審議会の庶務は,中野区教育委員会の権限に属する事務の補助執行に関する規則で定めるところにより,中野区長の補助機関たる職員が処理するものとする。156変更後: 審議会の庶務は,中野区教育委員会の権限に属する事務の補助執行に関する規則で定めるところにより,中野区長の補助機関たる職員が処理するものとする。
164157
165・中野区教育委員会公印規則(甲21)158・中野区教育委員会公印規則(甲21)
166 次の3つの公印を廃止し,1つを区長部局の公印(番号44を63の3)に変更した。159 次の3つの公印を廃止し,1つを区長部局の公印(番号44を63の3)に変更した。
167160
168廃止公印: 中野区立歴史民俗資料館印(歴史民俗資料館一般文書用),中野区立歴史民俗資料館割印(歴史民俗資料館一般文書割印用),中野区教育委員会印(生涯学習事務専用)161廃止公印: 中野区立歴史民俗資料館印(歴史民俗資料館一般文書用),中野区立歴史民俗資料館割印(歴史民俗資料館一般文書割印用),中野区教育委員会印(生涯学習事務専用)
169所管変更公印: 中野区立歴史民俗資料館長印(歴史民俗資料館一般文書用)162所管変更公印: 中野区立歴史民俗資料館長印(歴史民俗資料館一般文書用)
170163
171 このときの廃止公印は,対応する区長部局の公印が新調されたりもせず,ただ消え去った(甲31)(4(1)で後述)。164 このときの廃止公印は,対応する区長部局の公印が新調されたりもせず,ただ消え去った(甲31)(4(1)で後述)。
172【中野区教育委員会の規則等を中野区長の定める規則等に付け替え】165【中野区教育委員会の規則等を中野区長の定める規則等に付け替え】
173・中野区立歴史民俗資料館条例施行規則(甲22)166・中野区立歴史民俗資料館条例施行規則(甲22)
174 必要な事項を定めることができる教育長の権限(7条)は失くした。167 必要な事項を定めることができる教育長の権限(7条)は失くした。
175・中野区立歴史民俗資料館処務規則(規程)(甲23)168・中野区立歴史民俗資料館処務規則(規程)(甲23)
176 規則を訓令(規程)に付け替えた。169 規則を訓令(規程)に付け替えた。
177 3条(職員)に次の変更をした(ただし,「資料館」は中野区立歴史民俗資料館)。170 3条(職員)に次の変更をした(ただし,「資料館」は中野区立歴史民俗資料館)。
178171
179変更前: 資料館に,館長,主査その他必要な職員を置く。172変更前: 資料館に,館長,主査その他必要な職員を置く。
180変更後(現行): 資料館に,館長を置く。173変更後(現行): 資料館に,館長を置く。
181174
182 7条(報告)に次の変更をした。175 7条(報告)に次の変更をした。
183176
184変更前: 館長は,毎月5日までに前月中の資料館の運営状況を生涯学習に係る施策の執行責任者に報告しなければならない。177変更前: 館長は,毎月5日までに前月中の資料館の運営状況を生涯学習に係る施策の執行責任者に報告しなければならない。
185変更後(平成30年度末まで): 館長は,毎月10日までに前月中の資料館の運営状況を健康福祉部学習スポーツに係る分野の統括管理者に報告しなければならない。178変更後(平成30年度末まで): 館長は,毎月10日までに前月中の資料館の運営状況を健康福祉部学習スポーツに係る分野の統括管理者に報告しなければならない。
186変更後(令和元年度末まで): 館長は、毎月10日までに前月中の資料館の運営状況を区民部文文化・国際交流課長に報告しなければならない。179変更後(令和元年度末まで): 館長は、毎月10日までに前月中の資料館の運営状況を区民部文文化・国際交流課長に報告しなければならない。
187変更後(現行): 館長は、毎月10日までに前月中の資料館の運営状況を区民部文化国際交流担当課長に報告しなければならない。180変更後(現行): 館長は、毎月10日までに前月中の資料館の運営状況を区民部文化国際交流担当課長に報告しなければならない。
188181
189・中野区立歴史民俗資料館運営協議会設置要綱(甲24)182・中野区立歴史民俗資料館運営協議会設置要綱(甲24)
190 要綱を訓令(要綱)に付け替えた。183 要綱を訓令(要綱)に付け替えた。
191 2条に次の変更をした。184 2条に次の変更をした。
192185
193変更前(平成12年現在): 運営協議会は,資料館の基本的な運営事項に関し,中野区立歴史民俗資料館長の諮問に応じ審議するとともに,意見を述べるものとする。186変更前(平成12年現在): 運営協議会は,資料館の基本的な運営事項に関し,中野区立歴史民俗資料館長の諮問に応じ審議するとともに,意見を述べるものとする。
194変更後(現行): 運営協議会は、区長の諮問に応じ、資料館の基本的な運営事項について、審議し、又は調査するものとする。187変更後(現行): 運営協議会は、区長の諮問に応じ、資料館の基本的な運営事項について、審議し、又は調査するものとする。
195188
196 3条に次の変更をした。189 3条に次の変更をした。
197190
198変更前(平成12年現在): 運営協議会は,学校教育関係者,社会教育関係者及び学識経験者等の中から,中野区教育委員会が委嘱する委員10名以内をもって組織する。191変更前(平成12年現在): 運営協議会は,学校教育関係者,社会教育関係者及び学識経験者等の中から,中野区教育委員会が委嘱する委員10名以内をもって組織する。
199変更後(現行): 運営協議会の委員は、10人以内とし、学校教育関係者、社会教育関係者及び学識経験者等のうちから、区長が委嘱する。192変更後(現行): 運営協議会の委員は、10人以内とし、学校教育関係者、社会教育関係者及び学識経験者等のうちから、区長が委嘱する。
200193
201 8条に次の変更をした。194 8条に次の変更をした。
202195
203変更前(平成12年現在): 運営協議会の庶務は,資料館において処理する。196変更前(平成12年現在): 運営協議会の庶務は,資料館において処理する。
204変更後(現行): 運営協議会の庶務は、区民部区民文化国際課において処理する。197変更後(現行): 運営協議会の庶務は、区民部区民文化国際課において処理する。
205198
206(4) ここで「補助執行」を説明せざるを得ないこと199(4) ここで「補助執行」を説明せざるを得ないこと
207 「補助執行」とはどういう事務処理なのかを,次節で説明したい。200 「補助執行」とはどういう事務処理なのかを,次節で説明したい。
208 それというのも,回議用紙(「別紙1」。甲10の2)の回付先にも含まれる白土純副区長に関しては,(2)で述べた平成23年4月1日の例規改正の当時,中心的な役割を果たしたにも拘らず,甲25でマークを施した箇所の答弁を行なうなど,補助執行の理解が足りないからである。いわんや他の中野区職員においてをや。201 それというのも,回議用紙(「別紙1」。甲10の2)の回付先にも含まれる白土純副区長に関しては,(2)で述べた平成23年4月1日の例規改正の当時,中心的な役割を果たしたにも拘らず,甲25でマークを施した箇所の答弁を行なうなど,補助執行の理解が足りないからである。いわんや他の中野区職員においてをや。
209(5) 補助執行とは202(5) 補助執行とは
210 「補助執行」という語は地自法180条の2(普通地方公共団体の長がさせる補助執行)及び同180条の7(普通地方公共団体の委員会がさせる補助執行)の条文にある。本件は後者の条文に関係するから,その部分を抜き出すと,「普通地方公共団体の委員会は,その権限に属する事務の一部を,当該普通地方公共団体の長と協議して,…(中略)…その他の行政機関の長に委任し,又は普通地方公共団体の長の補助機関である職員…(中略)…をして補助執行させることができる。」となる。長に委任すると職員をして補助執行させるとは選言で並列されているのだから,補助執行は委任ではない。203 「補助執行」という語は地自法180条の2(普通地方公共団体の長がさせる補助執行)及び同180条の7(普通地方公共団体の委員会がさせる補助執行)の条文にある。本件は後者の条文に関係するから,その部分を抜き出すと,「普通地方公共団体の委員会は,その権限に属する事務の一部を,当該普通地方公共団体の長と協議して,…(中略)…その他の行政機関の長に委任し,又は普通地方公共団体の長の補助機関である職員…(中略)…をして補助執行させることができる。」となる。長に委任すると職員をして補助執行させるとは選言で並列されているのだから,補助執行は委任ではない。
211 したがって,中野区教育委員会は,その権限に属する事務の一部を,中野区長の補助機関である職員をして補助執行させることができるというべきであり,当該職員を事案決定に関わらせる場合には中野区教育委員会における系列(主管が起案し,関与者に回付し,及び決定権者が決定する。)に組み込まなければならない(中野区教育委員会の権限に属する事務の補助執行に関する規則2条(甲18)にもその旨の記述がある。)。204 したがって,中野区教育委員会は,その権限に属する事務の一部を,中野区長の補助機関である職員をして補助執行させることができるというべきであり,当該職員を事案決定に関わらせる場合には中野区教育委員会における系列(主管が起案し,関与者に回付し,及び決定権者が決定する。)に組み込まなければならない(中野区教育委員会の権限に属する事務の補助執行に関する規則2条(甲18)にもその旨の記述がある。)。
212 そして,上でも引いた最三判昭和29年9月28日が示したように,行政行為は表示によって成立するものであるから,外部へは中野区教育委員会の名を表示しなければならない。(3)で述べた,中野区教育委員会の権限に属する事務の補助執行に関する規則に3条(公印のなつ印等に係る手続き)を追加し,中野区教育委員会の公印を用いる旨を明記したのも,同じ理由からである。205 そして,上でも引いた最三判昭和29年9月28日が示したように,行政行為は表示によって成立するものであるから,外部へは中野区教育委員会の名を表示しなければならない。(3)で述べた,中野区教育委員会の権限に属する事務の補助執行に関する規則に3条(公印のなつ印等に係る手続き)を追加し,中野区教育委員会の公印を用いる旨を明記したのも,同じ理由からである。
2134 補助執行を標榜する事実上の所管又は違法な所管2064 補助執行を標榜する事実上の所管又は違法な所管
214(1) 公印規則207(1) 公印規則
215 中野区教育委員会の権限に属する事務の補助執行に関する規則3条(甲18)によると,教育委員会が区長の補助機関である職員をして補助執行ている事務の公印が中野区教育委員会に存在するはずである。しかし,中野区教育委員会公印規則及び「中野区教育委員会公印の使用区分について」(甲26)を見ても,上の3(2)の表の欄に記された,次の事務に対応する公印は定義されていない。208 中野区教育委員会の権限に属する事務の補助執行に関する規則3条(甲18)によると,教育委員会が区長の補助機関である職員をして補助執行させている事務の公印が中野区教育委員会に存在するはずである。しかし,中野区教育委員会公印規則及び「中野区教育委員会公印の使用区分について」(甲26)を見ても,上の3(2)の表の欄に記された,次の事務に対応する公印は定義されていない。
216209
217ア 社会教育に関する事務の一部(*)210ア 社会教育に関する事務の一部(*)
218イ 文化財保護審議会の庶務211イ 文化財保護審議会の庶務
219212
220 アに関しては,教育委員会印(生涯学習事務)を廃止した際に何も疑義が提出されていない(甲32)が,それは白土純副区長(当時は中野区教育委員会事務局教育経営担当副参事)が補助執行を移管と表現して教育委員らに説明をしたからである(甲25)。また,イに関しては,その時々で教育委員会印(一般文書用)又は区長印(区民部)が押捺され,一定していない(甲2,甲14の1,甲15。なお,中野区教育委員会に文化財保護審議会の庶務について情報公開請求すると文書は不存在(甲14の3)であった。)。213 アに関しては,教育委員会印(生涯学習事務)を廃止した際に何も疑義が提出されていない(甲32)が,それは白土純副区長(当時は中野区教育委員会事務局教育経営担当副参事)が補助執行を移管と表現して教育委員らに説明をしたからである(甲25)。また,イに関しては,その時々で教育委員会印(一般文書用)又は区長印(区民部)が押捺され,一定していない(甲2,甲14の1,甲15。なお,中野区教育委員会に文化財保護審議会の庶務について情報公開請求すると文書は不存在(甲14の3)であった。)。
221 また,次の事務に対応する公印は,「中野区教育委員会公印の使用区分について」(甲26)とは異なり,実際には区長印(区民部)が押捺されることがある(甲27)。214 また,次の事務に対応する公印は,「中野区教育委員会公印の使用区分について」(甲26)とは異なり,実際には区長印(区民部)が押捺されることがある(甲27)。
222215
223ウ 文化財の保護に関すること(文化財保護審議会の庶務を除く。)216ウ 文化財の保護に関すること(文化財保護審議会の庶務を除く。)
224217
225 つまり,上の3(2)の表の欄に記された,教育委員会が区長の補助機関である職員をして補助執行ている事務ア,イ及びウは,いずれも正しい名を表示して行政行為が行われているとは言えない。218 つまり,上の3(2)の表の欄に記された,教育委員会が区長の補助機関である職員をして補助執行させている事務ア,イ及びウは,いずれも正しい名を表示して行政行為が行われているとは言えない。
226(2) 中野区立歴史民俗資料館が特定社会教育機関であること219(2) 中野区立歴史民俗資料館が特定社会教育機関であること
227 地教行法(令和2年4月1日施行)に,2(2)ウでも述べた改正,すなわち23条第1項各号列記に既存項を繰下げの上,第1号として次の追加があった。220 地教行法(令和2年4月1日施行)に,2(2)ウでも述べた改正,すなわち23条第1項各号列記に既存項を繰下げの上,第1号として次の追加があった。
228221
229図書館,博物館,公民館その他の社会教育に関する教育機関のうち当該条例で定めるもの(以下「特定社会教育機関」という。)の設置,管理及び廃止に関すること(第21条第7号から第9号まで及び第12号に掲げる事務のうち,特定社会教育機関のみに係るものを含む。)。222図書館,博物館,公民館その他の社会教育に関する教育機関のうち当該条例で定めるもの(以下「特定社会教育機関」という。)の設置,管理及び廃止に関すること(第21条第7号から第9号まで及び第12号に掲げる事務のうち,特定社会教育機関のみに係るものを含む。)。
230223
231 中野区立歴史民俗資料館は,関連する例規類(甲19,甲22)から,上で定義された特定社会教育機関であることが明らかである。224 中野区立歴史民俗資料館は,関連する例規類(甲19,甲22)から,上で定義された特定社会教育機関であることが明らかである。
232 したがって,平成23年4月1日付で歴史民俗資料館を区長部局に移管する変更を,2(2)アで述べた,その当時の地教行法23条第1項第1号「スポーツに関すること(学校における体育に関することを除く。)。」及び同第2号「 文化に関すること(文化財の保護に関することを除く。)。」を根拠として行なったわけだが,その違法性は今や,事後的に明らかとなったと言わざるを得ない。225 したがって,平成23年4月1日付で歴史民俗資料館を区長部局に移管する変更を,2(2)アで述べた,その当時の地教行法23条第1項第1号「スポーツに関すること(学校における体育に関することを除く。)。」及び同第2号「 文化に関すること(文化財の保護に関することを除く。)。」を根拠として行なったわけだが,その違法性は今や,事後的に明らかとなったと言わざるを得ない。
233 そして,2(4)で述べたように,現行の中野区教育に関する事務の職務権限の特例に関する条例(平成23年4月1日施行)(甲17)は,いまだに現行の地教行法(令和2年4月1日施行)23条第1項第1号の「特定社会教育機関の設置,管理及び廃止に関する事務」を含んでいない。226 そして,2(4)で述べたように,現行の中野区教育に関する事務の職務権限の特例に関する条例(平成23年4月1日施行)(甲17)は,いまだに現行の地教行法(令和2年4月1日施行)23条第1項第1号の「特定社会教育機関の設置,管理及び廃止に関する事務」を含んでいない。
234 したがって,中野区長は,中野区立歴史民俗資料館に関して,特定社会教育機関を条例によらずに管理及び執行しており,適正な運営を図っていると言うことはできない。227 したがって,中野区長は,中野区立歴史民俗資料館に関して,特定社会教育機関を条例によらずに管理及び執行しており,適正な運営を図っていると言うことはできない。
2355 被告らが行政の適正な運営を図っていないこと2285 中野区教育委員会及び中野区長のそれぞれが行政の適正な運営を図っていないこと
236 このように,被告らは,教育委員会と区長部局が独立した行政機関であることを忘れ,連帯して区民を欺き,専ら恣意的に教育資源や文化財さらには社会教育を食い潰してきた。中野区立歴史民俗資料館が「学習スポーツ施設である」(3(3) 中野区立歴史民俗資料館処務規程(平成30年度末まで)7条(甲23))という詭弁や,旧中野刑務所正門の保存活用の方針決定の迷走(現地保存と記者発表したのち,それを覆し,曳家による移築を記者発表(甲29,甲30))はその氷山の一角であると言える。229 このように,中野区教育委員会及び中野区長のそれぞれは,教育委員会と区長部局が独立した行政機関であることを忘れ,連帯して区民を欺き,専ら恣意的に教育資源や文化財さらには社会教育を食い潰してきた。中野区立歴史民俗資料館が「学習スポーツ施設である」(3(3) 中野区立歴史民俗資料館処務規程(平成30年度末まで)7条(甲23))という詭弁や,旧中野刑務所正門の保存活用の方針決定の迷走(現地保存と記者発表したのち,それを覆し,曳家による移築を記者発表(甲29,甲30))はその氷山の一角であると言える。
237230
238第5 むすび231第5 むすび
239 被告らは,審査請求の手続きを毀損しており,行審法1条に目的として掲げられた,国民の権利利益の救済や行政の適正な運営が図られていない。また,被告らが事務を行なっている所管分掌の組織体系には,文化財の保護に関する事務の所管のみならず,本案でまだ指摘し尽くしていないほど多数の違法が含まれている。原告は,これらの違法に阻まれ,国民の知る権利に基づく傍聴の希望すら叶わなかったことになる。232 中野区教育委員会及び中野区長のそれぞれは,審査請求の手続きを毀損しており,行審法1条に目的として掲げられた,国民の権利利益の救済や行政の適正な運営が図られていない。また,中野区教育委員会及び中野区長のそれぞれが事務を行なっている所管分掌の組織体系には,文化財の保護に関する事務の所管のみならず,本案でまだ指摘し尽くしていないほど多数の違法が含まれている。原告は,これらの違法に阻まれ,国民の知る権利に基づく傍聴の希望すら叶わなかったことになる。
240 よって,原告は,被告中野区教育委員会に対し本件裁決の取り消し,被告中野区長に対し原処分の取り消し及び被告らに対し国家賠償法1条1項に基づき各自金160万円の損害賠償を求める。233 よって,原告は,被告に対し国家賠償法1条1項に基づき金160万円の損害賠償を求める。
241234
242235
243証 拠 方 法236証 拠 方 法
244 証拠説明書記載のとおり。237 証拠説明書記載のとおり。
245238
246添 付 書 類239添 付 書 類
247訴状副本         2 通240訴状副本         2 通
248甲号証写し        各1通241甲号証写し        各1通
249242