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ポケモンGOでの「かくれているポケモン」活用法

ポケモンGOの「かくれているポケモン」のタブを利用して、レアなポケモンをつかまえるやり方を説明します。

注意。GoPro や Genlock や Arduino とは無関係の記事です。うちのスタッフがポケモンGOで遊んでいるときにすばらしいことを発見したのですが、ゲームの裏技的なこともうちのブログではどんどん書いていいことになっています。

2016/11/5 UPDATE: 出現時間が15分単位から30分単位に変更。ソース更新の方法が変更

はじめに

ポケモンGOの仮想3Dマップで出会うポケモンは、次のいずれかです。

[場合 A] 誘導されたポケモン
2通りの方法でポケモンを誘導できます: 1) ポケストップに誰かがルアーモジュールを挿したあとの30分間、ピンク色の花吹雪が舞っているときに現れるポケモン(出現頻度は3分ごとに1匹)、
2) ポケモントレーナーのアバターがおこうのピンク色の芳香に包まれている30分間に、足元に現れるポケモン(出現頻度は5分ごとに1匹)。
[場合 B] 周期的ポケモン
その他。

以下では、周期的ポケモンに関することを書きます。なぜ「周期的」ポケモンというかは、次の節でわかります。

現れたポケモンがA、Bどちらの場合なのかは見て簡単に区別できます。ポケモンの足元(飛んでいる場合は真下)に同心円状の波動がありますが、半径が小さくてピンク色なら「場合 A」で、半径が大きくていなら「場合 B」です。

[例] 次のキャプチャー画像で、コラッタ(右、紫色のネズミのポケモン)は「誘導されたポケモン」(場合 A)で、タマタマ(左、人面卵のポケモン)は「周期的ポケモン」(場合 B)です。

periodical

ルアーモジュールやおこうを使うという攻略法が良く言われますが、それは場合 Aのポケモン(誘導されたポケモン)をつかまえるという、誰でもすぐに実行できる当たり前のハックです。あなたは、場合 Bのポケモンをつかまえるために何もしなくていいのですか?ただ、偶然にポケモンに出会うというのだけで本当に満足しているのですか?

以下では、運に頼らないで、場合 Bのポケモン(周期的ポケモン)とたくさん出会う、体系的で確実な方法をひとつ提案します。

ポケソース

私たちが発見した事実をいくつか挙げます。

[事実 1] 周期的ポケモンは、決まった地点にしか出ない。

直感に反するかもしれませんが、出現するポケモンが(誘導されたポケモンであっても)他の場所から動いて来て、さらに別の場所へ動いて行くことはありません。ポケモンは出現した場所にしばらくの間、滞在し、あなたがボールを投げてつかまえない場合には、その場で消え失せます。

[定義] 周期的ポケモンが出現する地点をポケソースと呼ぶ。

つまり、もし誰もルアーモジュールを使うことが無く、かつ、あなた自身がおこうを使わない場合、あなたがポケモンに出会うのはポケソースがあなたの観測範囲(半径40m。GPSの精度が悪いときには50m)に入った時だけです。

ポケストップとは異なり、ポケソースは仮想3Dマップ上に表示されません。とはいえ、ポケソースは、ポケストップの近くにあるという傾向があるかもしれません。

[事実 2] 各ポケソースでは毎時x分に、まだ可視化していないポケモンが出現する。ここで、xはポケソースごとに定まる定数である。

この事実があるので、誘導されたポケモン以外のポケモンを周期的ポケモンと呼ぶことにしたのです。

可視化していないポケモンは、あなたが歩いて行き、あなたのアバターの足元から出たピンクと白の同心円状の波動がポケソースに到達したとき、突然に可視化します。

次の地図は、東京近郊某所のもので、付近にあるすべてのポケソースの位置を示したものです(2016年11月6日現在)。

ato

数字は、出現時刻の「毎時x分」における定数xです。

[事実 3] ポケモンはポケソースに最小で27分、最大で30分間とどまる。(ポケソースが通常タイプの場合)
注意。ポケソースの中には、そこで出現するポケモンの継続時間が最小で57分、最大で60分のものがあります。このようなポケソースを2重ポケソースと呼びます。通常タイプのポケソースは1重ポケソースとみなすことができます。また、いままでポケモンが出現していたポケソースが停止することがあります。このような休眠ポケソースは0重ポケソースとみなすことができます。

上掲の地図で、赤丸は1重ポケソース、青丸は2重ポケソースです。

かくれているポケモン

次の事実が今回、私たちがいろいろ試したうちの最大の成果です。

[事実 4] かくれているポケモンとしてリストに表示されるのは、200m以内に居るすべての周期的ポケモンである。

1重ポケソースの場合、周期的ポケモンは、このタブに毎時x分に現れ、その27分から30分後に消えます(ただし、xは定数)。ポケモンがタブに表示されているうちに、対応するポケソースにあなたが歩いて充分近くまで来ると、仮想3Dマップであなたのアバターとポケモンが遭遇することになります。

注意。同じ種類のポケモンが200m以内に2匹以上居る場合、リストには1匹だけ表示され、何匹居るかは分かりません。

[例] いま、朝の8時20分で、あなたは上掲の東京近郊某所の地図の円の中心に位置するダイニングルームで朝食をとっているところだとしましょう。さて、その1分後にあなたは「かくれているポケモン」の中にミュウツーの灰色の影を見つけました。あなたはどうしますか?

答えを書く必要はなさそうですが、上の地図で、21という数字が書かれた場所にすぐ行ってください。そうすれば実際にミュウツーをつかまえることができます!なぜならば、毎時21分に「かくれているポケモン」に出現するのはそのポケソースのポケモンだけですし、このタブはとても正確に、200m以内の近所のポケモンをすべて表示しているからです。

以上で、真に革命的な技の解説は終わりですが、注意点を列挙しておきます。

[注意 1] 周期的ポケモンにボールを投げてつかまえると、かくれているポケモンとして表示されていたものも消えます。ただし、同じポケモンが200m以内にもう1匹いる場合には消えません。

[注意 2] 周期的ポケモンの出現時刻はとても正確ですが、消える時刻に関してはそれほどでもありません。

[注意 3] 「かくれているポケモン」にポケモンが表示される順番は、完全にランダムです。ただし、タブを閉じた場合に小さく表示されるのは、最上段の3個です。

Gotcha Snorlax using our method (14 August 2016)
この方法でカビゴンをつかまえました (2016/08/14)

ではお楽しみください!

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HVprog2の使い方

HVprog2 は、HVSP/PP や ISP、TPI、PDI でのプログラムができる Atmel STK500 のクローンです。 本記事では HVprog2 の使い方を説明します。

注意: 本記事は GoPro とかジェンロックと無関係です。 AVR マイクロコントローラに関する記事です。

前記事では、Atmel 純正 STK500 のソフト、ハード両面にわたる改造に関して述べました。改造前と改造後の Atmel STK500 に触発されて、それらのクローンとして設計したのが本記事のプログラマ HVprog2 です。

Atmel STK500 にはすでにハードウェアのクローンとして HVprog という名のプログラマがあり、HVSP/PP や ISP でのプログラムができると称しています。HVprog2 は HVprog の改良版にあたるので似たような名前にしましたが、HVprog2 は実際に AVR チップを HVSP/PP や ISP でプログラムできますし、それだけではなく TPI や PDI でもプログラムできます。

純正STK500と改造STK500、HVprog、HVProg2の比較

下の表は4つの AVR プログラマを比較した表です:

純正STK500 改造STK500 HVprog HVprog2
回路図 公開 不要 (*1) 公開 公開
Atmel純正ファームウェア 搭載可 不可 搭載可 搭載可 (*2)
ScratchMonkeyファームウェア 不可 搭載可 不可 搭載可 (*2)
RSTDISBL ヒューズの復元 不可 (*3)
HVSP/PP、ISP でのプログラム 信頼できない (*3)
TPI/PDI でのプログラム 不可 不可 可 (*2)

注1: 改造STK500は単に純正STK500からいくつかの部品を除去したり換装したりして作られています。

注2: Atmel純正のファームウェアは、プログラマのマイクロコントローラが ATmega8535 の場合に使えますが、この場合にはTPI/PDIでプログラムすることはできません。マイクロコントローラが ATmega16/32/64/128 か ATmega164/324/644/1284 の場合には ScratchMonkeyファームウェアを用いて、HVSP/PP や ISP だけでなく、TPI/PDI でもプログラムすることができます。

注 3: RSTDISBL (リセット無効化) ヒューズを復元するためには、ターゲットの電源電圧を制御する必要があります。HVprog にはそのための回路がありませんので、リセットを無効化した場合には元に戻せません。それだけではなく、STK500とHVprogの回路図を精査するとわかるように、同じソフトを使うにも関わらず前者は XTAL1 の信号を反転させていますが後者はそのままです。反転されていない信号をトリガとする HVprog はこの結果ありとあらゆる局面でタイミングに問題が生じ、信頼できないプログラマになってしまっています。

HVprog2 の概要

HVprog2の回路図です:
HVprog2

もしもあなたが ScratchMonkey のファームウェアだけしか使わないつもりなら、IC2 74HC165 とそのバイパスコンデンサ C3 は実装する必要はありません。これらの部品は Atmel 純正のファームウェアがハードウェアのバージョンを認識するためにだけ存在しています。

IC1 には DIP IC ソケットを使うことを推奨します。そうすれば、将来、マイクロコントローラを高性能なものに換装したりすることが容易になるからです。


次の写真は、HVprog2の製作例です。
プリント基板は当ショップで売っているものを使いました。
HVprog2

このプリント基板はスルーホール用の部品を可能な限り使うように設計しましたので半田付けは比較的容易なはずです。

JP1と印刷された6ピン(上側右)は PC に接続するためのコネクタで、非常に普及している Sparkfun FTDI ブレークアウトボードのピンの順に配列されています: 5V 版のFTDIブレークアウトをここに接続した場合、HVprog2のすべてのロジックは 5V で動作します(HVSP/PP と TPI は 5V ロジックであることが必要です)。一方、3.3V 版のFTDIブレークアウトを接続した場合、HVprog2 は 3.3V ロジックで動作し、これはPDIでプログラムするための電圧になっています。

HV_PROG と印刷された20ピン(下側右)はターゲットに接続するためのコネクタです。これらのピンはAVR Dragonの同名のピンと同じ順に並べてあります。つまり、AVR Dragon の網羅的なドキュメントをHVSP/PPでプログラムする際に参照して、ブレッドボードなどで配線できるということになります。

ソフトウェア

HVprog2にファームウェアを書き込むには、ジャンパ JP2 を 1-2 (SELF) 側にセットします。いま書き込もうとしているHVprog2とは別の ISP プログラマを、 ISP と印刷された 6 ピン(中央近くの左)に接続し書き込んでください。

上述したように、いまのところ、HVprog2に実装したマイクロコントローラに応じて2種類のファームウェアが利用可能です:

  1. ATmega8535 の場合は Atmel 純正の STK500 用のファームウェア
  2. ATmegaATmega16/32/64/128 または ATmega164/324/644/1284 の場合は ScratchMonkey

場合 1. Atmel 純正のファームウェアは Atmel Studio 4/5/6/7 のどの版をダウンロードしてもその中に含まれています: ファームウェアのバイナリファイルは STK500.ebn という名前ですが、このファイルのフォーマットは avrdude などの普通の書き込みソフトでそのままでは使えません。EBN2HEX.exeを使って “.ebn” を “.hex” に変換すれば書き込めるようになります (EBN2HEX.exe公式と思われるサイトを見つけることができませんでした。ご自分でGoogleなどで検索してダウンロードしてください)。ちなみに、ATmega8535のヒューズは、S8535C と CKOPT は unprogrammed に、SPIEN は programmed にして、 SUT_CKSEL=”Ext. Crystal/Resonator High Freq; Start-up time: 16K CK + 64ms” とした場合に動作することを確認しています。

場合 2. ScratchMonkeyを使います。必要なものの準備やコンパイル、アップロードの仕方は前記事に書いてあります。

ターゲットとの接続

HVSP/PP. HVSPの場合でもPPの場合でも、Device Connection Sheets, AVR Dragon’s manualに書いてあるとおりに結線してください: HV_PROGという同名のコネクタを参照のこと。
注意: VCC と JTAG を結線する必要はありません。HVprog2 にはそのコネクタがありませんので。


ISP. ISP でプログラムするには ISP コネクタを使います (JP2 は 2-3 にセットしてください)。
注意: HVprog2 の ISP6 ピンヘッダに出ている VCC にはつねに FTDI の VCC から電源が供給されています。


TPI/PDI. HVprog2 は 純正のSTK500 や改造STK500 のクローンなので、avrdude に前記事でやったのと同じ変更が必要です。

TPIのマイクロコントローラをプログラムするには、510オームの抵抗が2つ外付けで必要になります。HVprog2 自体は 5V版の FTDI ブレークアウトボードで PC と接続する必要があります。TPI ターゲットとの接続は次の回路図を参照してください:
TPI
5VとMOSIとMISOとSCKとGNDは “ISP” コネクタにあります (JP2 は 2-3 にセットしてください)。VTARGET は “HV_PROG” の 19ピン、RESET5V は “HV_PROG” の 5ピン、RESET12V は “ISP” の 5ピンまたは “HV_PROG” の18ピンにあります。回路図上の TPI コネクタはリセット無効化ヒューズがプログラムされていない(リセットが有効)の場合に接続してください。リセット無効化ヒューズがプログラムされている(リセットが無効)の場合には、ターゲットの電源を制御する必要がありますので、回路図上の TPI HV コネクタに接続してください。

PDIのマイクロコントローラをプログラムするには、510オームの抵抗が2つ外付けで必要になります。HVprog2 自体は3.3V 版の FTDI ブレークアウトボードで PC と接続する必要があります。PDIターゲットとの接続は次の回路図を参照してください:
PDI2
(破線内の部品は必要ありません。)

3V3とMOSIとMISOとSCKとGNDはすべて “ISP” にあります (JP2 は 2-3 にセットしてください)。

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Atmel STK500 の改造

本記事では Atmel STK500 スターターキットを改造し、 HVSP/PP や ISP だけではなく、 TPI や PDI でもプログラムできるようにします。

注意: GoPro や Genlock は本ブログでよく話題にされていますが、この記事は全くそれらと関係ありません。

イントロダクション

Atmel STK500は2001年に発売されて以来、現在まで使われている寿命の長い製品です。ただし、今日ではほとんどのユーザが STK500 を単にプログラマとして用いていると思われ、DIP パッケージのマイクロコントローラを試すためのスターターキットとしては用いていないのではないかと思います。

STK500のボード上には2つのマイクロコントローラ ATmega8535L (主)、ATtiny2313V (従) が搭載されており、次の特徴があります:

  • HVPP (High Voltage Parallel Programming) プログラマ
  • HVSP (High Voltage Serial Programming) プログラマ
  • ISP (In-System Programming) プログラマ

本稿で述べる改造では、主マイクロコントローラの ATmega8535L をフラッシュメモリの容量が大きい、ピン互換のマイクロコントローラに換装し、従マイクロコントローラの ATtiny2313V は除去します。後者の改造が可能なのは、Atmel が2009年以降は現在に至るまで主マイクロコントローラ用の新しいファームウェアを提供しておらず、従マイクロコントローラの唯一の役割であるところの主マイクロコントローラのファームウェアを更新するという機能はもはや不要であるとみなされるからです。STK500 のボードにメモリ容量の大きなマイクロコントローラが載ってしまえば、オープンソースのファームウェア、たとえばMatthias Neeracherさんが作ったScratchMonkey (Orangkucing Labでそれを改良しました)が動かせて、しかも TPI や PDIプログラマの機能も追加できます。

ハードウェアの改造

純正のSTK500から次の4つの部品を除去します:

  • U200 : ATtiny2313V
  • U202 : ATmega8535L
  • C200 : 47n のコンデンサ
  • R200 : 10k の抵抗
Remove orange parts. Add red parts.
オレンジ色の部品を除去。赤色の部品を追加。

(上図は Atmel の公式ページの “STK500 component placement: STK500_asm.pdf”からとりました。部品番号は同様に公式回路図 “Atmel STK500 schematic: STK500.pdf”に合わせてあります。)

上記の部品を除去した後のボードは次の写真のようになります:

After removing four parts from STK500
STK500から4つの部品を除去

そして次の部品を実装します:

  • U202 : ATmega1284P
  • R213 : 0 オームのジャンパ (はんだで橋をかけてしまっても可です)
  • J200 : 2×3 ヘッダーピン

新しく実装するマイクロコントローラはATmega8535とピン互換ならなんでも大丈夫です。具体的には ATmega16/32/64/128 や ATmega164/324/644/1284 ファミリーから選んでください。この稿では、もったいないくらい高機能な ATmega1284P を使いましたが、表面実装のマイクロコントローラの細かいはんだ付けで将来、何度も外したり付けたりを繰り返したくないと思ったからです。

これらの部品をはんだ付けし終わったら、STK500 のハードウェアの改造は完成です。改造後の写真が次です:

A STK500 mod board. A sticker (1) indicates the 1st pin of ISP6 connector.
STK500 改造後の基板。(1) と記されたシールはJ200 ISP6コネクタの1ピンの目印です

ソフトウェア

U202に実装した主マイクロコントローラにファームウェアを焼くには、別のISPプログラマが必要です。本稿では、どうやってファームウェアを焼くかとか、そもそもISPプログラマとは何かとかについては説明しません。そういうことに関してはたぶん、この記事の読者のほうが筆者よりも詳しいと思われます。:)

ですから、別のISPプログラマを新しくJ200に実装したISP6ピンヘッダに接続し、ここからダウンロードしたファームウェアを焼くだけです。 (このリンク先は ScratchMonkey を筆者がフォークしたブランチです。近い将来、トランクにマージされることを期待しているところです。)

ソースコードからコンパイルしたいという方は、Arduino IDE に DIP-40 コア(”Mighty Core”)が必要です。ここに書いてある説明にしたがってインストールしてください。”Mighty Core” がインストールできたら、IDE のTools メニューで board: “Mighty Core”->あなたのマイクロコントローラー, clock: “External 7.3728MHz”, pinout: “Standard pinout” を選び、ソースコードをコンパイルしてできた hex ファイルをあなたのマイクロコントローラーに焼いてください。

参考のために書いておくと、マイクロコントローラのヒューズは次のように設定して動作しています:

  • CKDIV8/CKOUT unprogrammed
  • SPIEN programmed
  • SUT_CKSEL = FSOSC_16KCK_65MS_XOSC_SLOWPWR

さて、STK500 改造基板は今や Atmel Studio 4/5/6/7 や avrdude (ISPの場合は stk500v2、HVPPの場合は stk500pp、HVSPの場合は stk500spを指定して) に純正の Atmel STK500 として認識されるはずです。

その上、今やこの改造基板は TPI や PDI のプログラマにもなっているのです。このことの詳細は次章以降で述べます。

STK500 改造基板を TPI/PDI プログラマとして使う — そのソフトウェア

残念ながら Atmel Studio は STK500 改造基板を TPI/PDI プログラマとしては認識しません。TPI/PDIプログラマとして使いたいときには、avrdudeのソースコードにパッチを当てて、STK500 改造基板はいつも avrdude から使うという風にしないといけません。

avrdude へのパッチは8個の部分からなります:

avrdude はいろいろな版がいろいろな形で配布されているため、ここに示したパッチは参考程度です。あなたがお持ちのavrdude のソースコードにpatchコマンドを動かして自動的に適用できるわけではなく、stk500v2.c というファイルの該当する箇所を見ながらあなたの手でパッチを当てる必要があるはずです。

(2021/8/16 追記: こちらmariusgreuel さんの avrdude v6.3.1.1 を fork してパッチを当てたものを用意しました。Windows 用のバイナリも Releases に置いてあります。)

パッチの第1の部分(1254,1263) は PGMTYPE_STK500 でも XPROG (TPI と PDI)を呼び出すようにします。

第2の部分 (3712,3719) と第3の部分 (3724,3736) では flash や eeprom の容量を計算し、第4の部分 (3795,3801) と第5の部分 (3806,3811) は計算した容量を STK500改造基板に申告するための変更です。

パッチの残りの部分は TPI のヒューズをプログラムする際に “書き込み前の神秘的な消去” が必要なための変更です。

STK500 改造基板を TPI/PDI プログラマとして使う — その接続

パッチ済みのavrdudeが用意できたので TPI/PDI のマイクロコントローラがプログラムできるようになりました。


TPI のマイクロコントローラをプログラムするには 510 オームの抵抗が外付けで2個必要です。次の回路図のように接続してください:
TPI
5V、MOSI、MISO、SCK、GND は J200 ISP6 コネクタにあります。VTARGET は基板上で “VTG” と印刷されているどのピンにも出ています (“VTARGET” ジャンパはセットしてください)。RESET5V は “PROG DATA” の5ピン、RESET12V は “ISP6PIN” または “ISP10PIN” に出ています。リセット無効化ヒューズがプログラムされていない時(リセットが有効の時)は、上の回路図で TPI と記されたコネクタの信号を使ってください。 リセット無効化ヒューズがプログラムされている時(リセットが無効の時)は、高電圧TPIはターゲットの電源電圧を制御する必要がありますので、上の回路図でTPI HV と記されたコネクタの信号を使ってください。


PDI のマイクロコントローラをプログラムするには、510オームの抵抗が外付けで2個必要なだけでなく、4回路入りの5V入力トレラントなトライステートバッファ 74LVX125 が1個必要になります。 次の回路図で示す接続を使ってください:
PDI2
3V3 は “VADJ” または “EXPAND0” コネクタの13ピンに出ています (“AREF” ジャンパはセットしてください)。MOSI、 MISO、SCK、 GND は J200 または “ISP6PIN” または “ISP10PIN” に出ています。MOSI_GATE は “ISP6PIN” や “ISP10PIN” の RESET ピンに出ています。

付記: PDI プログラミングは 3.3Vロジックです。STK500 は 5V ロジックですので、何らかのロジックレベル変換が不可避です。自動レベル変換のチップが世の中にいろいろありますが、筆者がMAX3002、GTL2003、TXB0104、FXMA108 を実際に使ってみたところ、このうちの一つたりともまともに動きませんでした。74LVX125のようなトライステートバッファを使わざるを得ないのは残念なことです。まったく、 Atmel の PDI ってなんてナイーブで馬鹿げたプロトコルなんだろうか!!


この稿を終わるにあたり、avrdude の起動時の引数の例をいくつか挙げておきます:

avrdude -c stk500v2 -p t10 -P /dev/tty.usbXXXXX -vvvv # 詳細な通信ログと tiny10 のシグニチャを表示する
avrdude -c stk500v2 -p x128a1 -P /dev/tty.usbXXXXX -U flash:w:hehehe.hex:i # hehehe.hex を xmega128a1 の flash メモリに書き込む

ただし、例で tty.usbXXXXX は STK500 改造基板が繋がっているシリアルポートを表しています。

楽しんでね!