説明
猫人研究所雑誌 第3号(2025年5月)
2020年、東京・中野区の公的施設の常設展示パネルに、創価学会第2代会長戸田城聖が豊多摩刑務所(中野刑務所)の収監者だったという、池田大作の小説『人間革命』に書かれているが信憑性の不確かな事柄が記載された。
私たちの仲間は、それがお墨付きとみなされ歴史修正につながるのをおそれた。そのため戸田が出獄したのは豊多摩刑務所ではないことを証明する文献を探し出した。さらに中野区に対し情報公開請求と行政不服審査法に基づく審査請求を行ない、2025年、戸田を収監者とするパネルの記載になんら根拠がないことを示す審査会答申を得た。
この冊子はそれらの経緯や資料をまとめて公衆の利用に供する目的で作成した。
あわせて、旧中野刑務所正門の文化財指定を審議していた中野区文化財保護審議会の傍聴を中野区が認めなかった問題についても、審査請求や裁判などの経緯を記した。裁判のあとで中野区は同審議会を公開とし、傍聴を認めた。
巻末に戸田が出たとされる鉄扉や半円形アーチ窓の設置時期に関する考察などを載せている。
——— 本書「裏表紙」より
もくじ 第1部 刑務所跡の資料室展示パネル 第1章 戸田は豊多摩を出所していない 2020年9月 『人間革命』冒頭の研究 「この門」はその門か 移送をめぐる問題 2020年11月 問題のパネル掲示 豊多摩を出ていない決定的証拠 池田: 戸田の妻が「中野」と 聖教新聞: 確かな資料はない 豊多摩出所と書いた理由 移送後“3日”で出たと書いた理由 第2章 審査請求 2022年9月 情報公開請求 設計が年度をまたぐ異常事態 収監者リストの紆余曲折 中野区が戸田記載を再三指示 2022年12月 情報公開請求2 虚偽? 押印欄が真っ白な書類 2023年2月 行政不服審査法の審査請求 2025年1月 審査会答申 押印「失念」 メタデータ検証されず パネル「業者に丸投げ」 戸田収監の根拠なし 「公文書の信頼性を重く損なう」 「猛省を促したい」 不正や隠蔽を疑うのも「無理はない」 第2部 中野区文化財保護審議会 第1章 傍聴したいだけなんですが 2020年2月 情報公開請求 2020年3月 審査請求 2020年6月~2021年6月 文化財指定までの動き 第2章 裁判 2021年2月 東京地裁に提訴 区議「もういいよこれ」 口頭弁論~判決 2022年2月 東京高裁に控訴 2022年6月 最高裁に上告 区議会変貌 区「他自治体の事例を研究」 中野区が公開検討を表明 2023年10月 公開を決定 2024年1月 施行規則改正 「区民や区議会から要望」 2024年3月 審議会公開 補遺 〈考察1〉『人間革命』の“小さな鉄の扉”とアーチ窓 1915年: 鉄柵・鉄門も半円形アーチ窓もなかった 先行調査/研究 1931年: 震災復旧工事中に見える鉄門の柱 1931年: 落成式に殺到する近隣住民と鉄柵・鉄門 1934年: 半円形アーチ窓のある写真が 1933年9月と1934年3月の鉄柵・鉄門は位置が違う 結論 〈考察2〉『人間革命』出所の描写と中野の街 想像上の街? 〈考察3〉池田にとっての“中野”の意味 「中野魂」のゆくえ 公明党区議の悲願 〈コラム1〉中野区資料中の刑務所収監者 〈コラム2〉聖教新聞バックナンバーはどこに 〈コラム3〉中野区文化財行政の所管 参考資料